特定技能外国人中途採用ノウハウ

特定技能外国人中途採用ノウハウ

「特定技能」という在留資格は、2019年の開始当初「技能実習」を修了した者が同じ職種(産業分野)で引き続き日本で就労する手段として資格変更をおこなうことが一般的でしたが、技能実習で受け入れた企業の「長く働いてほしい」「せっかく3年間(5年間)面倒を見たのに」という思いの一方、 「待遇の良い会社」「生活に便利な環境」「配偶者や友人の近く」「稼げる職種」に「転職」する者も少なくありません。ここでは採用する観点で、そのノウハウのアドバイスをいたします。

1.受け入れ可能か確認

外国籍人材の受け入れ(就労)は、まず「外国籍人材が自社で働ける資格を持っているか」と「求人(業務)内容が外国籍人材を受け入れることが可能か」の2つを確認する必要があります。「特定技能」に限って言えば、転職する場合には必ず入管への「資格変更」の手続きが必要になりますので、今日明日で転職者を受け入れ就労させることはできません。初めて外国籍人材を受け入れる事業所の場合は、まずは業務内容と在留資格についてよく理解・確認した上で、募集・採用しなけければなりません。

2.転職の際「資格変更」手続が必要

よく「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格なら、簡単に転職ができると勘違いしている外国籍人材・受け入れ企業の方がいますが、これは大きな誤りです。3年とか1年とか日本に在留できる期間は与えられますが、その間、どんな職種や企業でも自由に転職できるわけではありません。特定技能の場合も同様です。既に特定技能外国人を受け入れている事業所でしたら、外国人が該当する資格(技能実習経験・評価試験合格等)を持っていれば受け入れることが可能ですが、この場合でも入管に資格変更手続きをおこない許可を受けるまでは就労することはできません。

3.特定技能1号転職者(国内)の傾向

技能実習1号・2号の計3年を良好に修了した外国人は「特定技能1号」へ資格変更をすることが可能となります。継続して技能実習3号または特定技能1号で同じ企業に所属するケースも多くありますが、会社の都合または本人の希望で「特定技能1号」で他社への転職を模索する者も少なくありません。外国人の多くは「稼ぐこと」を最大の目的に来日していますので、少しでも良い待遇を目指すのは必然です。「残ってもらいたい」という事業所の希望もあるかと思いますが、事前に相談があるのならともかく、相談なく転職先を決めた者を無理に引き留めても要求がエスカレートする可能性もありますので、見極が必要です。転職者は転職先で満足すればいいですが、「聞いていた話と違った」とか「もっと良い条件を求めて」転職を繰り返す者、いわゆる「転職慣れ」してしまう者も少なくありません。このようなこともあり当社では、特定技能1号の人材紹介は日本国内の転職者よりも、技能実習を修了しいったん帰国し再来日を目指す方をお勧めしています。

4.「残業・休日出勤」「賞与」昇給」「各種手当」に着目

転職者はさまざまな求人を見たり同胞の情報を収集していますので、待遇の詳細を確認します。「日本人と同等以上」の雇用条件とすることが入管で定められていますが、残業・休日出勤といった「時間外手当」及び「賞与」「昇給」や「各種手当」、入社に伴う転居に関する支援等、自身の金銭的なメリットをよく確認した上で転職先を決めます。日本に「故郷」があるわけではありませんので、条件が良ければ何県であっても応募がありますが、賃金水準が高く生活に便利な都市部が人気があるのが実情です。地方の事業者の場合、都市部の事業所と競える雇用条件が必要となります。

5.大企業が節操のないことをしないで

外国籍人材が現在就労している事業所に「次に入社する企業から『〇月〇日までに入社しなければ採用しない』と言われているので、それまでに退職させてください」と申し出ることがある。ある事例は有名な洋菓子の会社で、想像するところ「クリスマスケーキの製造が必要な要因」として「12月〇日までに」入社してほしいのだろうと察した。食品会社は24時間365日稼働している事業所も多く休日や深夜の割増が見込めるため外国籍人材から人気がある。常識ある採用担当者なら「現職に迷惑をかけないように退職してきてください」と指導すべきではないだろうか。急に辞められる事業所はたまったものではない。「外国籍人材が急に辞めた」というレッテルを貼られかねないが、その原因をつくっているのが大企業かと思うと憤りを感じる。「そんなことを言う会社は行かないほうがいいよ」とその外国人に話したが、案の定、その企業はその後外国籍人材採用に関するトラブルで大きく報道されていた。

6.入社時の注意点

簡単に外国籍人材入社時の注意点を記載します。
・自治体への転入届(前居住地にて転出届提出)
・郵便局への転出入届出、ポスト等の名前の表示(郵便物が届くように)
・「源泉徴収票」「雇用保険被保険者証」「年金手帳」「マイナンバー」「建設キャリアアップカード」等、入社時の提出物について前職退職前に指導
・フリガナ表記を確認し各種届出の際に統一(統一されていないとトラブルになることがあります)
・銀行口座は帰国時に解約することが原則のため、再来日の場合でも基本新規開設になる場合がほとんど。帰国時に解約をしていない等の場合、再度開設ができない場合等ある
・海外から呼び寄せる場合は、印鑑の有無確認(なければ事前に作成しておくとよい)、寮の光回線契約等来日後のインターネット環境の用意